ここで一度、異質性を考えない基本的なモデルについて整理してみます。この場合には、平均的な家計を考え、また先々のインフレ率の予想についても、完全情報下の合理的期待形成仮説を仮定するため、家計間の異質性というものはありません。この場合、家計の消費行動がどうなるのかについては、オイラー方程式
u(ct)’/u(ct+1)’=(1+rt)/(1+ρ)
に従って各期の消費計画が決定され、これに従って家計は消費するということになります(これまででてきたClarida,Gali, and Gertler[1999]では、これを線形近似したIS曲線を使っているので、ここでは斎藤ほか[2016]の式を使用しています)。ここで、u()は効用関数、またρは主観的割引率で、これは1期間消費を引き延ばすことに対する対価もしくは要求利回り(の主観的な値)と考えることができる。rtは実質金利になる。今、効用関数をu(ct)=log ctとし、また実質金利は各期一定(rt=r)であるとすると、オイラー方程式は
ct+1/ct=(1+r)/(1+ρ)
とかける。ここで、仮に家計が要求する主観的な利回りの値ρと実際の実質金利rが等しいとすると、各期の消費が全て等しくなることがわかる。このことと、消費計画を決める際に、生涯の収入(計画)を考慮することは、ライフサイクル仮説によくあてはまるといえます。
また、オイラー方程式の実質金利(だけ)を引き下げることを考えると、元々ct+1=ctであったものがct+1<ctとなることがわかりますが、このようにt期の実質金利を引き下げたことで、t期中の消費が増える効果は、異時点間代替効果として知られています。
異質性を考慮しない基本的なモデルでは、この異時点間代替効果が家計消費に影響を及ぼす主要な役割を果たしています。
Clarida, Richard, Jordi Gali, and Mark Gertler. 1999. “The Science of Monetary Policy: A New Keynesian Perspective.” Journal of Economic Literature, 37 (4): 1661–1707.
齊藤誠・岩本康志・太田聰一・柴田章久(2016)、「新版 マクロ経済学」、有斐閣
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