流動性制約と予備的貯蓄

ここでは、流動性制約と予備的貯蓄の間の繋がりを指摘した研究をみていきたいと思います。前の投稿では、将来の経済や所得の不確実性が予備的貯蓄を引き起こす動機となるとしていましたが、Carroll,Holm, and Kimball[2021]では、将来流動性制約に陥ることが予想される場合に、これも予備的貯蓄を引き起こす可能性があることを指摘しています。

研究では、理論的な分析を通じて、将来流動性制約に陥る可能性がある場合、家計はそれが顕在化するのを避けようとするため、消費行動が慎重化し、予備的貯蓄が増えるという結果を得ています。つまり、将来的に流動性制約に陥るかもしれないという可能性は、経済や所得の不確実性と同様、家計の予備的貯蓄動機になりうるということになります。

論文ではさらにもう1つ、興味深い分析結果を示しており、将来的に流動性制約に陥る可能性がさらに加わる場合に、予備的貯蓄動機がより強まり、結果として既存の流動性制約が実現しないということが起こりうると指摘しています。これは例えば、既に来期に流動性制約に陥る懸念があるという状況下で、さらにその次の期にも流動性制約に陥るという懸念が新たに生まれる場合、新たに加わった流動性制約の可能性を回避したいということが、(やはり流動性制約が予想されている)その1期前の資産水準に関するハードルも引き上げ、より多くの予備的貯蓄(消費の見直し・我慢)が行われるということが考えられます。もちろん、これは個人の状況に依存するため、例えば現時点で資産水準が低い人などは、来期の流動性制約が実現すると考えられます。

Carroll, Christopher D., Martin B. Holm, and Miles S. Kimball(2021),”Liquidity Constraints and Precautionary Saving,” Journal of Economic Theory,195,105276.

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