財政政策について思うこと

今回は、前回の話の続きがまだできていないですし、たまに違うことも書きたいということで、最近興味をもったことについて書きたいと思います。

昨今、財政政策の在り方をめぐって、本当に注目度が高まっていると感じます。やはり物価高、特に食料品関係の物価高の生活への影響というのはあると思いますし、それこそ野菜なんかは、そういえば以前食べていたものを、何週間も食べていないなとふと思うような体験もしたりします。ずっとデフレの経済で、それこそ食料品の価格の心配をここまですることはなかったので、確かに未体験ゾーンといえます。

他にも、今年は下水道設備の老朽化問題が話題になりましたが、全国各地でああしたインフラ設備の老朽化が進んでいるのであれば、どこから手をつければいいのかという思いになります。また、地球温暖化の影響も大きく、農作物の生育や畜産物の生育、生息する魚の変化といった食への影響や、台風・集中豪雨などへの対応も必要になっているわけです。あと、個人的には社会保障や教育への予算の問題も気になるところです。

ぼーっとテレビをみつつ、そんな何でもかんでも欲しがるのも贅沢なのかなと思っていると、かの有名なドイツのワグナー先生が、国家活動膨張の法則を説き、そこから経費膨張の法則を提唱したことが頭をよぎりました。

ワグナー氏の考え方は、まず政府機能を法律または権力目的分野(軍事、外交、警察、司法など)と、文化または福祉目的分野に分類し、その上で、前者については国内的および国際的分業、自由競争システム、人口および人口密度の増加、交通事業と法律関係の複雑化などにより、社会システムの摩擦が複雑化すると、騒乱や内乱が生じてから鎮圧するよりも、未然に秩序の混乱を防ぐ予防主義的な対応が重要になるが、これは財務経費の増加に繋がると指摘し、後者についても、文化および福祉分野の政府機能は将来的にますます増大し、そのため財務経費が増えていくというものです。

そうか、じゃあ自然なことなのか(笑)とか思いつつ、でもやっぱり市場経済との違いからくる難しさみたいなものを感じてしまいます。

市場経済では、企業であれば売上、家計であれば所得というように収入がまずあって、基本的には皆それを踏まえて支出を決めていくと思います。まあ借金をすることもあるかもしれませんが、それはどこかで清算するものなので、企業であれば業績の向上に繋がるような使い方を考えるでしょうし、家計であれば借金をした分、その後の支出を切り詰めたりするでしょう。こうした考え方は量入制出の原則といわれています。

一方で、財政では、歳入は市場メカニズムで決まるようなことはなく、一般的に政治過程で決定されます。このため、予算をみて歳出を決めるというよりは、むしろ歳出が先に決定するというような、量出制入の原則に従っています。

このため、予算が足りないような場合には、増税をするか(新しい税目を作るか)、国債を発行するわけですが、経済への影響を考えれば、今の時代簡単に増税するというのもできないでしょうし、国債の発行にしても、日銀が保有残高を減らしつつある今、乱発すればトラスショックのようなことが起こりかねないといえます。

そうなれば先ずは歳出の評価をしっかり行って、極力必要な支出をしっかり見極めていくことが大切、ということになります。これは世間的にはワイズスペンディングといわれるものになると思われます。個人的には、日本もようやくデフレを脱しつつあるわけですから、より経済の供給側への支出を強化して、経済成長に繋がるような財政支出を計画的に行っていくことが重要だと思います。世界的には、これは以前少し話題になった現代サプライサイド経済学(Modern Supply Side Economics: MSSE)の考え方といえると思います。

一般的に経済成長の源泉といえば、労働力の増加、資本の蓄積、生産性の向上ということになりますが、このうち労働力の増加という点では、例えばリスキリングを強化し、転職や高齢者の再就職支援をすることも重要でしょう。他には、海外の優秀な人材を獲得することも、非常に重要といえます。いわゆる高度外国人材の獲得競争は近年激しくなっていると聞きますが、こうした人たちが勤務先を選ぶ際に、子供の教育環境を重視するという特徴があることが知られています。

この競争に勝つためには、優秀なインターナショナルスクールを誘致していくことも重要でしょうし、他にも、単純に水準の高さや学習サポートの充実といったことだけでなく、それこそ人種や宗教の違いといった、多様なニーズに対応するための教育プログラムの開発、そしてその全国展開を、文部科学省を中心として行っていく必要があると思います(実際、文科省でも国内の学校法人とともに調査研究事業を始めているようなので、今後益々お金が必要になると思います)。

また、優良な人材を獲得するという意味では、従来から続けている、留学生の受け入れを通じた雇用の拡大というのも、重要といえます。文部科学省でも、留学生を増やしていこうという方針の様ですが、学生の勧誘や日本語教育、住環境、地域交流、就職支援など、様々な取組が必要になるといえます。

こうした投資を進め、持続的に経済成長していくことで、防衛予算などの引き上げがあったとしても、バランスの良い財政運営を行うことができるといえます。

資本の蓄積ということでも、やはり大学の研究開発への支援が挙げられると思います。もちろん予算には限りがあると思うので、メリハリのある投資ということになるのでしょうが、そもそも研究開発みたいな分野というのは、市場の原理の世界から抜け落ちるようなものなんて山ほどあるわけで、そういうところこそ国の出番だと思いますし、多少予算はきついかもしれませんが、(ちょっと乱暴かもしれませんが)流石に普通の会社とかと比べれば、国が潰れるというのは起りにくいでしょうから、是非勇気をもって投資を行っていただきたいところです。

生産性の向上ということでは、AIなどのデジタル技術の活用の促進があると思います。ちょっと変な例えですが、デジタル技術の発達によって、今ではたった一人で、オーケストラみたいな種類の楽器(の音)を入れて(しかも細かくピンポイントに)、非常に複雑な曲が作れるようになりましたし、漫画を描くにしても、タブレットを使うことでスピードが格段にあがりました(しかも、今やアシスタントの方が在宅で仕事ができるような時代にもなったわけです)。ChatGPTにしても、資料の作成やアイデア出し、議事録の作成など、仕事の迅速化に役立っているわけです(もっといえば、学校や職場の人間関係について、相談役になってもらったりも可能になっているといいますし。ついにカウンセラーまでセルフの時代と考えると本当にすごいです)。

こうなってくると、やはり教育という観点で、こうした技術の使い方、そして問題点なども含めた向き合い方をしっかりと教えていく必要があるといえますし、そのための教育プランの開発などは欠かせないでしょう。この分野はむしろ子供たちの方がネイティブなので、教材づくりとかは難しいかもしれませんし、むしろ試してみながら子供の反応を採り入れてアップデートしていくと、いいアイデアが出てくるかもしれません。そのためには、テストのような形でそれなりに環境もそろえて(もうそれこそeスポーツの設備とか、部活やデジタル以外の教科にも活きるような色々な教材をそろえて)、良かったものは極力全国展開して(でもこの辺になると公立学校とかは国の管轄ではないですかね…)とかしていくことが重要と言えます。

あとは、近年影響が深刻化してきている、農業や畜産業、水産業における地球温暖化への適応政策についても、個人的には是非とも予算を割いていただきたいです。例えば農業でいえば、暑さに強い品種の開発や、必要に応じた新しい農薬の開発などは必要でしょう。後者については、例えば最近話題になっている稲作の害虫といわれるカメムシなどは、元々日本にいた個体ではありますが、従来は数が少なく、また基本的に彼らは越冬ができないので、特に気にならなかったものが増えてきたということだと思います。これは要因としては、1つには耕作放棄地の増加で越冬できるようになったというのがあると思うのですが、地球温暖化の影響も確実にあるでしょう。こうしたカメムシに対応した農薬は、現状でもいくつか挙げられているみたいですが、こう急に増えてきたことを考えると、新しいものを開発する必要もあるでしょう。ただ、非常に繁殖力が強いみたいですし、そうすると世代交代の過程で免疫を獲得する可能性は高く、余程強い農薬を作って、さらにガンガン個体数を減らさないと厳しいように感じますが、今の時代それはできないでしょうから、難しいと思います(そもそも元々個体が少なかったのも、今よりもおおらかだった大昔の時代に、強力な農薬で絶滅寸前まで減らしてしまったわけで、今は狙った個体のみに効いて、他は無害みたいな、究極の中間管理職みたいな世界線で農薬の開発をしている時代でしょうから、大変だろうなとは思います…)。

畜産業をみると、鶏にしても豚にしても牛にしても、近年の暑さは相当生産に影響を及ぼしているといいます。長期的にみればこうした施設への冷房設備の設置などへの支援は必要かもしれません。水産業にしても、養殖業への影響が台風なども含めてあるでしょうし、また日本近海の魚の生態系も、水温の上昇などによって変わってきているようですから、必要な補償や漁業資源の調査・研究などは、積極的に行っていくべきと思います。いずれにしても、長期的な食料品の価格安定を考えると、こういったところへの支出は、行ってほしいなとは感じます。

支出の検証の方法については、例えば財政学のなかの一分野である、公共経済学で開発されている手法を用いるということや、オルタナティブデータと呼ばれる、高頻度のデータの活用などが有効になると考えられます。また、例えば国土交通省では、新規事業の費用・便益分析を行うための指針を策定しています(国土交通省(2024))し、ほかにも、各府省では、政策評価を行うためのマニュアルの開発などを行っています(総務省(2025b)など)。

参考文献

国土交通省(2024)、「公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針(共通編)」(https://www.mlit.go.jp/tec/hyouka/public/090601/shishin/shishin090601.pdf)

総務省(2025a)、「政策評価ポータルサイト」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/seisaku_n/portal/index.html

総務省(2025b)、「公共事業に関する評価実施要領・費用対効果分析マニュアル等の策定状況(政策評価ポータルサイト内)」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/seisaku_n/koukyou_jigyou.html#/

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