“財政政策”の分析について調べてみる①

近年は、財政政策が非常に話題となっています。ただ、これまでどんな研究が行われているのかについては、自分自身あまり知らないな、と思ったので、いくつか研究を調べてまとめてみました。

研究自体はいろいろなものがあるみたいなのですが、自分としては大きく2つのテーマについてみてみようかなと考えています。

1つ目は、財政政策による景気刺激策を分析した研究になります。調べてみると、初期のころは新古典派的な動学的確率的一般均衡モデル(DSGEモデル)を用いた分析がちらほらみられ、2000年代になると、価格の硬直性をモデルに組み込んだ、ニューケインジアンタイプのDSGEモデルを用いた分析が行われているみたいです。また、それと同時に、実証分析も各国で行われています。

全体的に調べてみた印象としては、実証分析の研究については議論が比較的収束しつつある部分と、まだまだこれからという部分とあるように思いますし、モデルを用いた分析については、今もいろいろ新しい形のDSGEモデルを用いて研究が行われているようです。

もう1つは、政府債務のデフォルトリスクに関する研究です。このきっかけは、たまたまなのですが、新興国経済の論文を読んだことにあります。その割には、この後の部分でそんなには新興国を扱わないので、ここで少し書かせていただくと、Neumeyer and Perri (2005)やAguiar and Gopinath (2007)が先進国と新興国のマクロデータの分析を行っているのですが、これらの研究では、例えば小国開放経済的な先進国の場合、総所得の変動と比べて総消費の変動が小さくなる傾向があるのに対して、新興国の場合には、総所得よりも総消費の変動の方が大きくなるという事実を指摘しています。

経済学的な考え方でいえば、先進国のデータの動きというのは納得で、つまりは、景気拡大期に得られる余剰所得の一部を貯蓄して、不況期にはこれを活用することで消費の落ち込みを緩和させるという考え方に合致するものになります。

一方で新興国の場合には、景気拡大期には国内の消費・投資需要が大幅に拡大しますが、国内の投資環境は十分とはいえないため、外国からの資本流入を必要とします。こうした海外からの資本流入は、国際的な金融市場の状況や国内のファンダメンタルズの変化によって、突然の流入停止や逆流といったことが起こり(こうした現象は“サドン・ストップ”とも呼ばれています)、その結果として急激に経済が引き締まり、大幅な景気後退に繋がります。これが新興国の消費の変動性の大きさに繋がっています。

実は、いろいろと調べてみると、こうした金融環境の特徴は、民間の債務だけではなく国債でもあてはまることが指摘されています。Neumeyer and Perri (2005)、Garca-Cicco, Pancrazi, and Uribe (2010)、Alvarez-Parra, Brandao-Marques, and Toledo (2013)といった研究では、新興国政府が発行する国債の価格(つまり、海外投資家が購入可能と判断する国債価格)について、所得が増加すると上昇し、減少すると低下することを示しています。つまり、所得が高い程、新興国は良い条件で国債を発行できますが、所得が下がってくると、国債の発行条件は悪化していくことになります。また、これらの論文ではもう1つ重要な発見をしていて、国債の発行残高が増加していくと、新興国が発行できる国債の価格が低下するとしています。

このため、新興国経済を分析する人たちは、こうした特徴を考慮したモデルを構築する必要に迫られるのですが、実はさらにもう1つ考えなければならないことがあります。それは何かというと、新興国では時々政府債務がデフォルトすることが知られている、ということです。Asonuma and Trebesch (2016)およびAsonuma, Niepelt, and Ranciere(2023)で構築されたデータセットでは、1970年以降の政府債務のデフォルトが200件以上記録されています。2022年末では、新興国の債務不履行に陥った国債の割合は、新興国のGDPの2%を占めています。このため、新興国経済の分析を行うモデルの中には、政府がデフォルトを起こすか否かを選択することを組み込んだものがあり、ソブリンデフォルトモデルと呼ばれています。

実際書いた内容としては、いうほど新興国の話が入っていないのですが(本当にたまたまなのですが)、こうした手法は先進国経済の分析にも用いられていて、そういった話や、他にも関連するような話を整理しました。

参考文献

Aguiar, M., and G. Gopinath(2007). “Emerging Markets Business Cycles: the Cycle is the Trend.” Journal of Political Economy,115(1), 69-102.

Alvarez-Parra, F., L. Brandao-Marques, and M. Toledo (2013). “Durable Goods, financial Frictions, and Business Cycles in Emerging Economies.” Journal of Monetary Economics,60(6), 720-736.

Asonuma, T., D. Niepelt, and R. Ranciere(2023).”Sovereign Bond Prices, Haircuts and Maturity,” Journal of International Economics, 140,103689.

Asonuma, T., and C. Trebesch(2016). “Sovereign Debt Restructurings: Preemptive or Post Default?” Journal of the European Economic Association,14(1), 175-214.

García-Cicco, J., R. Pancrazi, and M. Uribe(2010). “Real Business Cycles in Emerging Countries?” American Economic Review, 100 (5), 2510–2531.

Neumeyer, P., and F. Perri(2005). “Business Cycles in Emerging Economies: the Role of Interest Rates.” Journal of Monetary Economics, 52, 345-380.

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