今回は、国債の安定的な消化について考えようと思います。表1は日本銀行の資金循環統計という統計に記載された、国債等をどういった機関がどのくらい保有しているかという数字になります。
表1. 国債等の保有比率

(出所)日本銀行「資金循環統計」から筆者作成
最も特徴的なのは、中央銀行(日銀)の保有割合で、2012年12月には11.94%だった保有割合が2023年12月には47.90%になっています。この理由としては、2013年4月に始まった量的・質的金融緩和政策(いわゆる異次元緩和政策)によって、中央銀行が保有残高を拡大したことにあります。一方で、2012年12月時点に38.10%と最大の保有先であった預金取扱機関(銀行)の保有割合は、2023年12月には11.74%となっています。
ただ、この方針については、2024年3月にイールドカーブ・コントロールという、日銀が市場の長期・短期金利を目標水準に操作するという政策が撤廃され、さらに2024年8月から、長期国債の段階的な買入れ減額が始まったことで現状では修正されており、2025年9月時点では、日銀の保有割合は44.22%と低下しています。
こうなってくると、民間、特に元々最大の国債保有先であった預金取扱機関の保有というのが再び期待されるところですが、三菱UFJ銀行資金証券部(2025)の分析によれば、こうした機関で日銀が保有する国債を全て保有するのは厳しいと指摘しています。
そうした中で、今後期待される保有先としては、表1の中で2012年12月以降伸びてきている海外投資家と、2012年12月以降、未だそこまで伸びてきていない家計が考えられます。
このうち、海外投資家については、ドル円ベーシス(ドル保有者が円調達時に受け取るプレミアム)などを通じた投資妙味から、比較的価格変動が小さい短期国債を中心に保有が増加しています。ただ、海外の投資家については、仮に保有比率が高まっていくと、国債に対してより高い利回りを求めるようになることや、何かのきっかけで売ってしまう可能性があります。
そうならないようにということで、日本政府としては、財政健全化の道を示して、国債の信用を維持していくことが重要といえます。そのためには、しっかりとした歳出の見直しを行って、いわゆるワイズスペンディングを行っていくことや、税制改革・成長戦略を示して、税収が今後増加することを示していくことが重要といえます。
他には、国債の平均残存期間を短期化してくこともありかもしれません。これは海外投資家に限らず、国内の金融機関にもいえる話で、こうした機関が重要視している指標に金利リスク量というものがありますが、これは保有残高×残存年数で決まるため、平均残存期間が短くなる場合、金利リスク量は低下することになります。また、急激な金利の変動も、市場の混乱を招く恐れがあるため、政府・日銀はしっかりと対話を行っていくことが重要といえます。
あとは、仮に国債がデフォルトに陥った場合には、政府だけではなく民間セクターも含めて幅広く影響が及ぶことになりますが、そうならない場合でも、格付けが一定水準以下になると、やはり民間セクターを含めて、幅広く影響がでます。
家計については、先ほどの資金循環統計では購入比率はそれほど伸びていませんでしたが、上野(2026)によれば、販売額では増加傾向にあるそうです。そうした中、論文では、さらに販売を増やす方策として、①商品性の向上、②商品ラインアップの拡充、③NISA対象への追加が考えられるとしています。
①については、3つのなかで最もハードルが低いとしています。先ほども述べた通 り、現状、個人向け国債の販売動向は上昇にあるということですが、内わけをみると、固定3年、固定5年、変動10年とあるなかで、固定3年と5年の販売額が伸びている一方で、変動10年については販売額が減少傾向にあるとしています。
変動10年の販売動向がなぜ振るわないのかについては、金利設定方法にあるとされており、10年国債については、変動金利にしていることもあり、現状利率が市場金利よりもかなり低い水準(0.66をかけた水準)に抑えられているとしています。
市場利回りが低い時期には、金利差はそれほど大きくなかったので良かったのですが、現状利回りが上昇していて差が大きくなっており、そうしたところが販売不振に繋がっているとしています。今後については、この差を埋めていくということが考えられるかもしれません。
②については、例えば固定10年のような商品があってもいいと思いますし、満期までの期間が長い程、市場利回りは高くなることを考えると、より長い期間(例えば30年とか)の商品を作ることも考えられます(もしくは、30年債のような長めの国債を組み入れた債券型投資信託ができてきてもいいのかもしれません(とか思ってネットで探してみたら、アモーヴァ・アセットマネジメント株式会社(旧日興アセットマネジメント)というところが、“Tracers 日本国債ウルトラロング(30年平均)年4回分配型”という商品を、昨年作っていたみたいです。しかもNISA対象商品みたいです))。
③は個人向け国債をNISAに組み入れるという考え方で、現状個人向け国債には20.315%の税金が課せられているのですが、これをNISAに組み入れることで非課税として、商品力を高めるというものです。ただ、この考え方の場合、政府が国債を買ってもらうために税制優遇を行うというのは、印象としてはあまり良くなく、同じ元本保証型利付商品である預金や社債などとの間の不公平感も問題となる可能性があって、結構きわどいといえます。
現状でも国債の販売動向は比較的堅調ということですから、今後も商品の魅力を高めて、販売を増やしていくことが重要といえます。
参考文献
上野剛志(2026)、「日本国債を誰が買う?~日銀撤退が進む中での安定消化に向けて」、基礎研レター2026-01-05、ニッセイ基礎研究所
三菱UFJ銀行資金証券部(2025)、「国債のすべて―その実像と最新ALMによるリスクマネジメント(改訂版)」、金融財政事情研究会
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