経済には家計、企業、金融部門、それと政府部門があるわけですが、家計部門の役割といえば、消費と労働供給ということになります。このうち消費について、経済ショックや政策ショックが加わった時に、家計の消費に及ぶ影響に家計間の違い(異質性)がでるとしたら、それはどのようなメカニズムで起こっているのかを、調べる必要があるということになります。
ただ普通、マクロ経済の分析で用いるニューケインジアンモデル(例えばClarida,Gali, and Gertler[1999])では、家計の異質性というものは考えておらず、代表的な家計と呼ばれる、平均的な家計の存在を考え、この家計は生涯の自身の収入(の予定額)を念頭に、各期の消費を説明変数とする、生涯の効用関数を最大化するよう、各期の消費計画を決定・実行するとしている。
異質性を生じさせる原因として、まず最初に挙げられるのが、所得や資産の異質性ということになるでしょう。例えば負のマクロ経済ショックが生じた場合を考えてみても、①所得や資産の大小の違い、②所得の構成や、労働所得といわれるいわゆるサラリーマンの給料にあたるものについては、雇用面・労働時間面・時間当たりの賃金などの変動性の違い、③資産構成の違いによって、消費が受ける影響は異なる(あと、前の投稿「金融危機と経済格差(2024/07/07)」にあったように、所得や資産・負債が変動した際に、それが消費の変動に繋がる程度にも、所得や資産水準で違いがあることが知られているので、この影響も考えられる)。
他にも、消費に影響を及ぼしそうな要素は考えられる。例えば、先ほどのニューケインジアンモデルでは、各期の総消費額のみが効用関数の説明変数であるため、個別の財やサービスの特性は考えていない。そのため、購入した財・サービスはその期間中に全て消費(効用を得られるのもその時点のみ)するとしているほか、ある時点のある財・サービスの消費と、それ以降の消費の間に関連性はないものと考えている。
ただ、個別の財・サービスを思い浮かべてみると、そうした条件に当てはまらないものも結構あり、例えば耐久財や、耐久財以外でも例えば歯の治療、旅行、教育費、食料品でも調味料や味噌、米などを思い浮かべると、こうしたものはお金を支払った後も、複数期間にわたって家計に効用を与えてくれるわけであり、本来最適な消費計画を考える時には、こうした要素を考慮に入れた効用関数を考えるべきかもしれない。また、紅茶やコーヒーのような嗜好品や携帯電話は、一度使い始めるとそれ以降はなくてはならないものとなり、家計の消費変動に正の自己相関を生むこともありえる。
更に、家計の消費に関する特性を考えると、現在から先々の将来までをフラットに捉え、そうしたなかで消費計画を決める人もいれば、例えば何かを消費する時に、現在・もしくは近い将来に消費をする方が高い効用が得られる(つまりすぐに消費することにより重きを置く)という人もいる。こうした特性の違いも、異質性を生じる要因となる。
ここまでは、財政面や購入する商品の特性の違い、家計の消費に対する好みの違いについてみてきたが、もう1つ、先々の経済環境についてどう考えているかの違いも、家計の消費に異質性をもたらす可能性がある。この経済環境としては、インフレ率が重要であり、例えば仮に先々インフレ率が高まっていくと予想すれば、そのことは家計が消費を前倒す方向に作用すると考えられます。
Clarida, Richard, Jordi Gali, and Mark Gertler. 1999. “The Science of Monetary Policy: A New Keynesian Perspective.” Journal of Economic Literature, 37 (4): 1661–1707.
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