少し脱線-景気循環理論について13

景気循環への影響という点で、個々の企業の要因で他に注目されることといえば、企業の債務契約があります。理論的な研究としては、Kiyotaki and Moore(1997)やBernanke,Gertler, and Gilchrist(1999)などが有名です。

これらの研究は、DSGEモデルに何らかの形で金融システムの役割を入れよう(表現しよう)ということから、企業の借入制約をあれこれモデルに組み込んだ取組みといえます。また、基本となる考え方として、資金の借り手である企業と、貸し手である金融機関の間に、情報の非対称性(貸し手が借り手の行動や投資機会、収益状況等の情報を入手するためには何らかのコストが必要となること)の問題が存在するとしています。

その上でKiyotaki and Moore(1997)では、金融機関は融資している企業が倒産の際にどの位の資金返済能力があるのかはっきりとはわからず、その対策として企業の資産自体を差し押さえるという考え方をしており、そのため担保価値の上下動が次期に借入できる量を上下させ、さらに生産高の振れ幅も変動させる動学を生むという理論を構築しています。

一方でBernanke,Gertler, and Gilchrist(1999)の考え方、これは元々はCarlstrom and Fuerst(1997)が提唱したものですが、そこでは、仮に借り手の投資が失敗して貸し手からの貸出を返済できずにデフォルトに陥った場合、貸し手が債権を回収する際に破産清算のモニタリングコストが発生するため、貸し手は借り手に対して、あらかじめ融資の際にプレミアム(External Finance Premium)を要求して,貸出金利をリスクフリーの金利より高めに設定するとしています。このプレミアムは借り手の純資産と(負の)相関があり、純資産が変動すると借り手のコストが変動し、景気循環にも影響が及ぶことになります。

いずれにしても、こうしたメカニズムの影響の大きさは全ての企業で均質とは考えにくく、例えば大企業と中小企業とで影響が異なるということが考えられます。

因みに、Gertler and Kiyotaki(2010)やGertler and Karadi(2011)では、企業ではなく金融機関の資金調達能力に焦点をあてた理論を構築しており、さらにGertler and Kiyotaki(2015)ではこれに加えて、銀行の取付騒ぎも考慮したモデルを構築しています。こうした影響については、金融機関によって違いがあることが考えられます。

Bernanke, Ben S., Mark Gertler, and Simon Gilchrist(1999).”The Financial Accelerator in a Quantitative Business Cycle Framework.” in J. B. Taylor and M. Woodford (ed.), Handbook of Macroeconomics, edition 1, volume 1, chapter 21, 1341-1393.

Carlstrom, Charles T., and Timothy S. Fuerst(1997). “Agency Costs, Net Worth, and Business Fluctuations: A Computable General Equilibrium Analysis.”American Economic Review,87(5),893-910.

Gertler, Mark, and Peter Karadi(2011).”A Model of Unconventional Monetary Policy.” Journal of Monetary Economics,58(1), 17-34.

Gertler, Mark, and Nobuhiro Kiyotaki(2010).”Financial Intermediation and Credit Policy in Business Cycle Analysis,” in Benjamin M. Friedman and Michael Woodford (ed.), Handbook of Monetary Economics, edition 1, volume 3, chapter 11, 547-599.

Gertler, Mark, and Nobuhiro Kiyotaki (2015). “Banking, Liquidity, and Bank Runs in An Infinite Horizon Economy.”American Economic Review, 105(7), 2011-2043.

Kiyotaki, Nobuhiro, and John Moore(1997).“Credit Cycles.”Journal of Political Economy, 105(2), 211-48.

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