2000年以降の世界の経済成長は、2008年の世界金融危機や新型コロナウイルス感染症のパンデミックなどのマイナスの影響を受けながら、それ以外の期間では緩やかに成長を続けています。
そのような成長を続けてこれた要因はいくつかあると思いますが、1つは世界金融危機や新型コロナウイルスのパンデミックの時に、大規模な金融緩和や財政政策を行って経済を需要面から下支えしたことがあげられます。
もう1つ、特に2010年以降の特徴としては、先進国でのIT産業の成長があげられます。特に米国では、Amazon、Apple、Google(アルファベット)、Facebook、Microsoftといったビックテック企業がアメリカ経済をけん引する形で、クラウドコンピューティングや人工知能、eコマース、ソーシャルメディアの普及が急速に進み、これらの分野での経済活動が活発化しました。また、UberやAirbnbといったシェアリングエコノミーのプラットフォーム企業もこの時期に台頭しました。
英国では、ロンドンのイーストロンドン地区、特に“シリコン・ラウンドアバウト”と呼ばれるエリアが、英国のハイテク産業の中心として発展しています。様々な技術スタートアップがここで設立され、IT分野に深く根差したネットワーク効果を構築しているほか、Apple、Google、Microsoftなどの米国発のITジャイアントが、欧州の主要拠点として選択しています(ロンドン市内・周辺には、優秀な技術者を雇用できるインフラが整い国際的なビジネス環境も魅力的)。
また、ロンドンはフィンテック関連のスタートアップの重要な拠点になっていて、クラウドストライク(CrowdStrike)、モンゾ(Monzo)、スターリングバンク(Starling Bank)などのフィンテック企業がロンドンを拠点に成長しています。
英国以外の欧州各国はどうかというと、やはり成長産業であるといえます。例えば、大手ERPソフトウエア企業であるドイツのSAPや、オンラインミュージックストリーミングサービス企業であるスウエーデンのSpotify、グローバルに展開する決済プラットフォーム企業であるオランダのAdyenといった企業の成功例がありますし、ポーランド、ルーマニア、エストニアといった東欧諸国では、人件費が比較的安価で、教育レベルが高く、特にITエンジニアリングやソフトウエア開発の分野で高い評価を得ています。
ただ、米国と比べた時に、例えばグローバル規模のIT企業がないことや、IT産業の成長を支えるインフラ(高速インターネットやデータセンターなど)の整備が遅れていること、ベンチャーキャピタル市場がまだ弱いこと、GDPR(一般データ保護規制)や税制規制など、特にデータやプライバシー、企業課税に関する厳しい規制といったことが指摘されていて、こうしたことから、米国と比べると、IT産業の成長はもう一歩というところに留まっています。
日本でも、デジタルインフラの遅れやIT人材の不足、規制・法整備の課題といったことから、やはり成長著しい米国等に後れをとっている状況です。
他には、2000年以降の期間を通して、中国とインドの経済成長のインパクトが大きくなっているという特徴があります。特に中国が2008年の世界金融危機以降も高い経済成長を続けることができた理由として、1つには、輸出主導型の経済から内需主導型の経済に移行したことがあげられます。
もともと中国は輸出主導型の経済成長を遂げていたため、2008年の世界金融危機の影響は、それなりに受けました。そうした中、世界金融危機を受けて、中国政府は4兆元のインフラ投資を実施し、鉄道、高速道路、港湾、空港、エネルギー施設などの整備を大規模に推進しました。また、2013年に発表された一帯一路政策(このプロジェクトはアジア、アフリカ、ヨーロッパを結ぶ広域インフラネットワークの構築を目的としている)の一環として、中国政府は国内外で大規模なインフラ投資を促進し、中国企業が当該プロジェクトに参加することで、国内経済の需要の喚起や雇用の創出をはかりました。
内需の拡大という意味では、国内でのデジタル経済の急成長も要因としてあげられ、例えばアリババ、テンセント、バイドウ(百度)などの企業が2010年代後半に急成長を遂げましたし、他にも電子決済のAlipayやWeChat Payなど、デジタル化が社会全体に浸透し、新たな経済成長の柱となりました。さらに、中国は2010年代に入ってからも引き続き都市化を推進しており、農村部から都市部への人口移動が続いていますが、これによって都市の建設需要が高められ、不動産開発や住宅建設が経済の重要なけん引要素となっています。
また、中国は技術革新やハイテク産業に注力する“製造強国”構想を掲げていて、その中核となるのが、2015年に発表された“中国製造2025”という戦略です。これにより、半導体、ロボット工学、5G通信、人工知能(AI)などのハイテク分野での技術革新と製造能力向上が目立っており、技術特許の申請数は2020年に初めて国別特許申請数で世界1位を記録しました。
ただ、中国にしても新型コロナウイルスのパンデミックには苦しみましたし、様々な景気刺激策は、地方政府や企業における債務の大幅な増加に繋がりました。また、景気刺激策の影響などで不動産バブルが発生し、その後の対策や規制強化によって、2020年代に入ると不動産バブルの崩壊リスクがでていています。さらには、世界金融危機を契機に、内需主導型経済への移行を進めてきたわけですが、かといって完全に脱却できたわけではなく、その後の新型コロナパンデミックや米中貿易戦争などのたびに経済に影響が及んでいます。これらのことは世界的にみても共通するものが多く、他にも高齢化問題など、経済成長に立ちはだかる様々な要因と闘っていくことになるといえます。
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